0時の温室の奥には、政治史植物区画がある。 毎晩零時になると、葉脈が年表のように光り、 マリオカノンの出来事を順番に咲かせる。

案内役はだしうどんではなく、 彼の演説原稿だけを運ぶ無人台車だった。 台車は時々止まり、根元に落ちた古い標語を拾っていく。

一番人気は「第一次福岡戦争の花壇」。 第一次福岡戦争の区画では赤い蕾が同時に開き、 隣の第二次福岡戦争区画では、 咲かなかった花の名札だけが静かに増えていく。

見学ノートには世界観設定_教育制度と階層の学生たちが、 政治用語の代わりに植物名で議論した記録が残っていた。

  • 「この政策は繁殖力が高い」
  • 「しかし土壌は分断される」
  • 「接ぎ木できる制度設計が必要だ」

零時五十九分、館長が照明を落とし、 最後にグローバル年表の苗床へ霧を吹く。

「史実は固定される。でも解釈は育つ。」

外へ出ると、温室のガラスに夜露が流れ、 それがまるで新しい境界線を書き換えるインクに見えた。