港のはずれに、月齢で料金が変わる観覧車がある。 新月の日は無料。 満月に近づくほど高くなる。

理由は誰も知らない。

ぼくは財布の小銭を全部使って、 ほとんど満月の夜に乗った。

ゴンドラはゆっくり上がる。 倉庫街の灯り、川の反射、遠いマンションの窓。

頂上に近づいたころ、 向かいの席に誰かが座っている気がした。

姿は見えないのに、 「大丈夫、ちゃんと満ちていく」と言われた気がする。

降りるころには、 何を不安にしていたのか、うまく思い出せなかった。

係員は半券を受け取りながら言った。

また欠けても、また満ちますから。

帰り道、川面に揺れる月を見て、 欠けることと終わることは違うのだと知った。