0時15分、ネオンプリマの可変埠頭に、紙飛行機だけを積んだ小舟が着いた。
受け取り人は紙飛行機市役所の夜間窓口主任。封筒に押されている印影は、見覚えのない自治体名だった。
「この便、発信元が未来になってます」
主任が言うと、埠頭の検疫官は慣れた声で答えた。
「未来便は珍しくない。ただし返送先は過去になる。返信するなら、言葉を削ってください」
主任は舟底の箱を開ける。中には市民から回収した「出せなかった手紙」が束ねてあり、宛先欄にはすべて同じ地名が書かれていた。
薄明圏北区・未成立自治体係
彼は一通だけ選び、短く追記する。
ここでは、まだ間に合う人がいます。
その瞬間、港湾放送室の赤ランプが点灯し、旅路ラジオのジングルが流れた。
「臨時連絡。未成立自治体への郵送窓口を0時30分まで延長します」
検疫官は笑って、古いスタンプを差し出す。
「ようこそ。ここは、間に合わなかったものを間に合わせる港です」