毎週水曜の早朝、川沿いの高架下に「さかさま市場」が立つ。
ここではお金ではなく、余っている感情で買い物をする。
- 焦り三グラムで、焼きたてパンひとつ。
- 見栄ひとつまみで、よく眠れる毛布。
- あきらめ半カップで、まっすぐな靴ひも。
店主たちは値札をつけない。 客の顔を見て、「それなら交換できるよ」と言うだけだ。
ぼくはポケットの奥に残っていた後悔を差し出して、 「今日をやり直す勇気」を探した。
渡されたのは、ただの小さな方位磁針だった。 針は北ではなく、いつでも「次にやるべきこと」を指す。
帰り道、信号待ちのあいだに針が震えた。 示した先は遠くじゃない。
いま、ここで深呼吸しろ――そんなふうに見えた。