丘の上にある古い郵便局には、風向きで配達先が決まるポストがある。

北風の日には「まだ会えていない人」へ。 南風の日には「もう会えない人」へ。 東風の日には「明日の自分」へ。 西風の日には「昨日の自分」へ。

ぼくは、出せなかった謝罪を書いた。 封筒の宛名は空白のまま、切手の代わりに小さな葉っぱを貼る。

局員のおばあさんは、封筒を光に透かしてうなずいた。

言葉が本物なら、ちゃんと届くよ。

三日後、ポストに返事が届いた。 見覚えのある丸い字で、たった一行。

「遅くなっても、書いてくれてありがとう」

差出人欄には、風向きだけが記されていた。