坂道の途中にある写真館では、 「まだ起きていない出来事」の記念写真を撮ってくれる。
背景紙は空模様から選ぶ。 晴れ、曇り、夕焼け、そして「雨上がりの途中」。
カメラマンはシャッターを切る前に、 被写体へひとつだけ質問する。
その日、あなたはどんな顔で笑っていますか?
ぼくは答えに詰まった。 未来の笑い方なんて、習ったことがない。
それでも撮影は進み、 現像された写真には、少しだけ背筋を伸ばしたぼくが写っていた。 隣には、まだ知らない誰かの影。
受け取り袋には注意書き。
「この写真は、くじけた日のポケットに入れてください」
雨雲の下でも、雲間はどこかにあると信じられるから。