この町の市役所には、苦情窓口の代わりに「願いごと窓口」がある。

書式は自由。便箋でもメモでも、レシートの裏でもいい。 ただし提出方法はひとつだけ。

紙飛行機にして、屋上から飛ばすこと。

飛行距離が長い願いは「本気度が高い」とみなされ、 短く落ちた願いは「いますぐ助けが必要」と判断される。

昨日、ぼくは小さな紙飛行機を飛ばした。

うまく笑えなくなりました。

今朝、ポストに返信が届く。

了解しました。笑顔課より、 本日15時に「無理しない練習会」を開催します。 参加できなくても大丈夫。あなたはすでに、 助けを呼ぶことに成功しています。

この町では、救急車のサイレンより先に、 だれかの「困った」が空を飛ぶ。