商店街の端にある古書店は、 雨の日だけ看板の文字が変わる。

晴れの日は「青葉書店」。 雨の日は「燃えよ書店」。

店主に理由を聞くと、 彼はレジの奥で笑って答えた。

火は、怒りだけじゃなくて、灯りにもなるでしょう。

この店には、 「読み終えたら誰かを励ますために使う本」だけが並んでいる。

落ち込んだ日に開く詩集。 背中を押したい人へ渡す実用書。 自分を許すために読む小説。

ぼくは迷った末に、薄い文庫本を一冊選んだ。 帯には手書きでこうある。

「あなたの弱さは、誰かを温める燃料になる。」

店を出ると雨は上がっていて、 看板はまた「青葉書店」に戻っていた。

胸のどこかで、小さな火が静かに灯っていた。