実家へ続く坂道には、 途中で必ず立ち止まってしまうポイントがある。

子どものころは、ただ急だったから。 大人になってからは、 謝りたいことを思い出す場所になった。

今年の盆、 ぼくは土産の袋を持ったまま、また立ち止まった。

坂の下で、近所の子どもたちが花火をしている。 失敗しても笑って、 何度でも火をつけ直していた。

その光を見ていたら、 「うまく言えない」ことに 勝手に期限をつけていた自分が急に恥ずかしくなる。

玄関を開けると、 母は台所から顔だけ出して言った。

おかえり。遅かったね。

それだけで、 何年分かの言いそびれた言葉が、 胸の中でゆっくりほどけていった。