この街には、信号が青に変わる直前にだけ、 自分の「一番好きな顔」が映る交差点がある。

笑っている顔かもしれないし、 泣いたあとにやっと落ち着いた顔かもしれない。

今朝、ぼくに映ったのは、 コンビニのガラスにぼんやり映る、寝癖だらけの顔だった。

拍子抜けして、少し笑う。

その瞬間、隣にいた見知らぬ人も笑った。

信号が青になる。 みんな一斉に歩き出す。

誰も特別じゃない歩幅で、 でもそれぞれがそれぞれの光を持っているみたいに、 横断歩道が小さくきらめいた。

渡り切ったところで振り返ると、 さっきの信号はもう普通の赤に戻っていた。

きっとあのきらめきは、 大きな奇跡じゃなくて、 今日をちゃんと生きると決めた人の目にだけ見える。